2018.09.26

『ジーンズ企画工房』オーダージーンズを家族で発信

ものづくりの主役は誰か。

府中市でオーダージーンズを作ることができるお店「ジーンズ企画工房」。プロ野球選手などもオーダーに訪れるジーンズショップだ。また、シニア層に向けた多機能らくあきジーンズなど履きやすいオリジナルジーンズのファンも多い。そこで家業を継いで働く安田明雄さん、香里さん夫妻に、お店と家庭について話を聞いた。

ジーンズ企画工房で働くきっかけ

(香里さん)

長男が一歳になった三年前から働き始めています。それまでは、全く違う仕事をしていました。結婚する以前から福祉施設に勤めていて、社長は、ジーンズショップで働いていたかな。結婚をして一年後、実家である「ジーンズ企画工房」に帰り、社長は3年ほど働いていました。私は、しばらく施設での勤務を続けていました。

 

(明雄さん)

当時、紳士スラックスをメインにされている同業者の方から、新規事業を一緒にやらないかと僕へ声をかけてくださって。その会社で3年働き、東京へ転勤になって彼女と一緒に上京しました。2010年に実家に帰り、三男が生まれたきっかけで、一緒にやろうかと夫婦で働くようになりました。

僕は、会社の経営、型紙の縫い代を直したり、裾直しをしたり、お店の接客をしたり、営業に行ったり。縫製以外は大体やっています。

 

(香里さん)

一緒に働きはじめた当初は、ミシンを踏むと頭が痛くなるような、知恵熱が出るような感じでした。(笑)

 

(明雄さん、以下 A)

今では、お店の看板となっている旗を縫えるようになりましたね。

 

(香里さん、以下 K)

「そう、人は追い込まれると何でも出来ます」(笑)

やったことのない仕事をはじめた理由

(K)

私は、子どもが一歳になったら仕事復帰というスタンスでやっていました。そして、三男が10ヵ月位の時に、次男がポロっと

 

「ママ、大人なのに働かんのは、いけんじゃろう」。

 

って言ったんですよ。(笑)なんでママは家にいるんだろうと疑問もあったと思うんですが、働いているママのイメージがあったからかも。それが、きっかけになりましたね。

私もずっと家にいるつもりはなかったですし、家業をやっているのに、別の仕事をするのもどうかなと思って。それに、家業を継いで社長になるという話も出ていたタイミングだったので、ここは腹を据えて、一から教えてもらわなきゃと思ったんです。それを機に一緒に働くようになりました。

 

(A)

「そんなこと言ったんじゃな。僕も、初めて聞いたわ」(笑)

一緒に働く

(K)

全て初めての世界で、繊維業界も初めて。私に何ができるんだろうという思いはありました。働きはじめた当初は、母がやっていた付属品の発注を教えてもらったり、一緒に外回りに出て挨拶をしながら取引先を覚えたり、経理を教えてもらったり。そういう入り方でした。今は経理と接客を主にやっています。

本当に分からないことが分からないという状態で、デニムのブラックとインディゴの生地の見分け方が分からなかったです。裏を見て分かるんだなぁという感じでしたね。皆さんに教えてもらいながら一つづつ覚えていきました。

 

(A)

「それはなかろう・・・」。

 

(K)

「ほんとほんと! 今はもちろん分かりますよ」。

家族で経営

(K)

家庭の話だと、子どもたちが、土日休みの時に仕事なので、前もって絶対この日に休むぞって決めていないと出かけられません。夏休みとか他所の子だったら、海行く、山行く、映画に行く、という普通のことができない不便さはあります。そして、自営で少人数ということもあり、夜遅くまで働くことがざらにあります。いったん家に戻り、子どもに夕飯を作ってまた仕事。夜中の二時くらいまで夫婦で仕事をしたり。しんどいと言えば、しんどいですね。

 

でも、逆に両親と同居していない期間が長かったので、その時期の不便さに比べれば、両親に助けられています。小さな子を抱えて病院に行くとか、泣いてる子どもをお風呂入れているんだか、ただ濡らしているんだか分からないという状況は、一緒に住みだすと無くなりますよね。そういう面で、本当に助かっています。子どもが言った一言も、寂しいという感じが無かったので「働かないの?」と言ったんだと思います。ありがたいです。

 

(A)

東京では、僕が仕事から家に帰るのが夜12時半。その時のことと比べて言っているんだと思います。

 

(K)

また、不思議なもので、上手くいくときは全て上手くんですが、悪い時は一つつまずくと、歯車がとことん合わないというか。意欲がある時は、仕事に繋がってお客さんに還元できたりするんですけどね。

 

(A)

そこは、家族でやっているメリット、デメリットというか。

 

(K)

「波があるので、その辺は難しいね」。

 

(A)

「そうね、難しいね」。

家業で良かった

(A)

家庭で仕事の話しをするのは、あんまり良くないことだと思っていたんですよ。家庭にまで仕事を持ち込むなみたいな。でも、仕事の話しを家庭でせざるをおえないんですよね。どうしても誰が何時に来るとか、どういう話しだったかとか。一緒にご飯を食べてる時なんかはしますね。

そういった環境だと、子どもの中にも、家族はこの仕事で生活をしているだという意識が芽生えたり、親や、おじいちゃん、おばあちゃんとの距離も近くなって、家族みんなでやっているという想いは強くなります。

 

(A)

少しづつ理解してきているのかもしれないですね。

ものを作るのが好きな次男は、学校から帰ると、会社でミシン踏んで、枕カバーとかティッシュケース作ったりして。学校から帰ると普通に職場にいますね。

アットホームな貸し切りサロン

(A)

お店を始めた際は、若い方が多いかなっと思っていたんですが、初めてみると、広島や遠くだったら東京からお店に来てくださっています。電車に乗ってわざわざ東京からね。そういったお客さんには、ジーンズを見てもらった後は、府中のお好み焼きを一緒に食べに行ったりもします。そういった他の場所を紹介していくことで、まちも活性化したら良いなって。

 

(K)

「ジーンズ企画工房」は、アットホームな雰囲気のあるお店だと思っています。オーダーを頼みに来てくれるお客さんが、逆にお土産を持ってきてくれたり。「すみません」みたいな。

 

お客さんは、ジーパン屋だけどシニアの男性客が多く、印象としては優しく律儀な方々です。気持ちに余裕があるというか。お客さんが溢れるほど来店する感じでもないので、お客さんに対して、貸し切りぐらいの感じで接客することができています。こちらのお話しをしっかりと聞いてくださったりと、ありがたいお客さんたちです。

また、来店時に、府中の観光地や食べ物屋さんを紹介したら「行ったよーおいしかったよ、ありがとう」って、後日わざわざ電話をくださったりする方もいらっしゃいますよ。

 

(A)

若い人だと、ビンテージ物が好きでジーンズに詳しい方が来られたり、そうなると話は尽きないですね。僕らもより楽しいです。

 

(K)

お店に来られた方によく言っているのは、シニアの方で普段ジーンズを履かない人でも、とりあえず

 

「うちのジーンズは、思っとるもんと違いますから」。

 

と試していただくようにお伝えしています。仕事の日も家にいる時もスラックス、という方にこそ初めての一本として履いてもらいたいです。

 

(A)

自分たちが欲しいと思う商品を先代が作り、結果的に同年代のファンが多くなっているんだと思います。それは、他の商品も同じです。商品を考える時は、家族や社員それぞれが良いと思う商品を相談しながら作っています。

大切にしていること

(K)

結婚したての頃は、自分の意見中心でものごとを進めていくことが多かったんです。でも、何か良いことあったかなと思い始めて。

小さなことですが、夕飯前にお菓子を子どもに食べさせないとか。子育て本に書いてあるようなことをきちっとしたかったけど、それによって誰かと争うようになるんだったら、きちっとしなくても良いんじゃないかって。私がガって言ってしまうことで、周りの空気が悪くなるし、両親も子供も「うぅ、うん」みたいになってしまいます。

言葉も含めて「家族でやっている」ということをよく考えるようになりました。

 

(A)

地元である府中で、ものづくりをしているということをもっと発信していきたい想いがあります。それを様々な人たちと共感していきたいですね。

僕らは、お店に立って販売をしてるけど、実際に作ってくれているのは、ミシンを踏んでくれている人たち。

 

「その人たちが主役なんですよね」。

 

自分が作ったものを、お客さんと話しをしながら発信してもらいたいと本気で思っているくらい。そうしたら、顔もわかるし、主役の人たちのことを知ってもらえる。作る側の意識も変わってくると思うし。

それに、府中には、繊維関係の洗い屋さんや加工屋さんもあるので、そういう人たちも含めて発信していけたらと思います。

これからやってみたいこと

(K)

普通に街中に出かけた時に、うちのパンツを履いている人に会ったことがないんです。もし見かけたら、うちのパンツって絶対分かるのに。百貨店で展示会をした際は、リピーターの方で履いてくださっている人たちの行列を見ることはあるんですが、実際、まだまだ知られてないんだなって。

 

「うちのパンツを履いとった人、見たよ!」

 

って話しをしたいですね。もし見かけたとしたら、絶対話しかけると思います。(笑)

 

(A)

「僕も都会で見かけたとしても、話しかけるな」(笑)

 

お店の横には生産工場があり、ジーンズを縫っている縫子さんや、デニムの生地を裁断している「主役」が目に留まる。

ものづくりを支える主役と共に、デニム・ジーンズの生産地として地元である府中市を発信する「ジーンズ企画工房」。府中の安田夫妻に、自分だけのオリジナルジーンズを是非作ってもらって欲しい。

『ジーンズ企画工房』
住所:〒726-0033 広島県府中市目崎町144
電話番号:0847-41-7193
店舗営業時間:10:00~18:00
駐車場:有

HP:http://jeans-plan-studio.co.jp/
FB:https://www.facebook.com/rakuaki/