備後府中人 BINGO FUCHU PEOPLE

2019.01.01

医療用帽子のお店『niko』

「居てくれるだけでいい」そんな存在になりたい。

抗癌剤治療中のケア帽子専門店「niko」。自身の経験から、帽子専門店を開業された竹本裕子さん。彼女に開業しようと思ったきっかけや、帽子への想いを聞いた。

ダメなところを出していきたい

昔は「ちゃん(しっかり)としないといけない」という考えに、はまっていました。しっかりできないのに優等生でいるという感じがしんどいのに。やっと色んなことを経験して、他の人に自分のキャラを許してもらおうって思えるようになれました。年々緩くなっていこうと。

長女だし、良い子でいないといけないとか、誰かに言われた訳ではないんですが、勝手に思い込んでた部分があります。今でもその感じが出てくる時もあるので、自分を出せるようにしようって思っています。

 

「解放せんといけん。緩めんといけんって。」

 

そんな風に自分を緩めようと言い聞かせるけれど、周りにしっかりしている人がいると、やっぱりしんどいかも。許してくれる、みたいな緩さじゃないとしんどいですね。笑

しんどい時には、一人の時間を作ってドライブしたり、お風呂に浸かったりして、リラックスするようにしています。

 

そして、ダメなところを出していこうと思っています。自分はこういう人間だって認めることから。

ダメなところを見せていかないと、私だからできているんだと思われてしまう気がして。乳癌を経験した私だからお店とかもできたんだって思われるんじゃなくて、ダメなところを見せていくことで、他の人に「私でも大丈夫!」と思ってもらえるようになりたいって。

 

人から「乳癌を経験してすぐにお店をはじめるなんて凄いですね。」ってよく言われるんですが、私からしたら、なるようになっただけ。だから、こんなダメなところがあるよ、こんな苦労もしてきたよっていうところを見せていかなきゃと思いますね。

 

「まだ凄い人でありたいって時がありますけどね。笑」

 

それから「やっぱり人じゃな」って思うから、人を大事にしなきゃと思っています。

売り上げやビジネス、ビジネスってなった時期に、逆にガクッときて。やっぱり人だなと。

 

「目の前の人を幸せにしたら、幸せが広がる。」

 

そう思っています。

 

自分のやりたいことを見つける

府中出身で、地元の高校を出て、短大に行って府中で就職して。子どもの3人目が産まれ際に、会社を退社して、実家の縫製工場の手伝いを始めたんです。手伝うにあたって、縫製の勉強をしようと思い、人づてに「勉強するとこあるよ」と言われて行ってみたんです。そしたら、縫製を勉強すると思っていたら、パターン(型紙の製図)を勉強するところだったんですよ。それでも、資格を取るために2年間は通いましたね。私、婦人子供服製造技能士1級の資格を持ってるんですよ。

 

当時、そこに通っている6名の方がいて、皆さん縫製業から勉強しに来られていました。その内の一人がジーンズ加工会社にお嫁にいかれた方がいて。その方が、インターネット販売をされていたんです。それこそ16年も前に。自分のサイトを作って、子供用のジーンズ販売していたのが凄いなぁて思って。

 

「えー!ネットのお店しょうるん!」(お店やってるの?)

 

みたいな驚きで。そこで、ネットのお店凄いと頭に入りました。

 

それから資格を取って、実家の工場で縫製を8年間やりました。サージングってパーツにオーバーロックをかけていく作業をしていましたね。

 

そんな時に癌になったんですよ。癌になって

 

「私は、やりたいことやらしてもらおうと思ったんです。」

 

それまでは、自分がやりたいことは何も発信せず、ひたすら良い子でいようとしていて。

進路も行った方が良いだろうなって思う高校や短大、会社に就職して。良いお嫁さん、良い母。そして、会社を勤め上げて、老後で終わる。それが女性の普通の人生だと思っていたんですよ。それが普通って。

それから、体調がしんどい時期に、休ませてと言って、1年間休ませてもらったんです。

 

休みながら私なりに「何がやりたいんかなー」って考えたんです。それでブログを書いていたら「帽子作って」とか「鞄作って」と声をいただくようになりました。

他にも、友人の子のために帽子を作ってあげたりもしました。自分用の帽子とかも。そうやって作っていると「作ることをしていきたいな」と、そこで思ったんですよ。もちろんネットも。笑

 

他にも、縫製の仕事の時に、商工会議所のギフトショーに参加させてもらったことがあって「作って売る」ことを経験して「縫うだけって相手がいないな」と思ってたんです。

友人の子が帽子をすごい喜んでくれたり、人に直接売るっていう経験をして、やっぱり相手がいて、やりとりをして、喜んでもらう仕事がしたいなって。そして、ネットと、喜んでもらえる仕事と、自分の経験を考えたら、帽子しかないなって。

 

帽子をやろうと思って、3か月でサイトを作って、治療から1年後にはお店を始めていたんですよ。自宅にミシンを買って、縫製工場とは関係なく。

それから物が増えて手狭になったので、縫製工場の事務所だった今の場所へ引っ越しをさせてもらいました。それから、ラジオに出演させてもらったりしていると、お店に訪ねてくれる人がだんだん増えてきたので、人が来れるようにと、自分たちで改築したんですよ。義弟に机作ってもらったり、壁は、家族と友人で塗り替えたり。自分がこうした方が良いかなって思うことを続けてきて、今のお店になっています。

普段は出荷作業とか、メールの対応したり、制作してます。販売は、ほとんどネットですね。週に一回お店を開けていて、ぼちぼちとやっています。

 

ここに来たら話をして「元気になるわ!」って切り替えスイッチが入る場所にしたいなって。

 

「気分次第なので。なんでも。」

 

ちょっとしたことで気分が変わると思うので、そういう場所になれば良いなって感じです。

 

自分らしさから外れた時期

「ちょっと外れた時期が2年位ありましたね。」

 

売り上げが上がっていき、賞をいただいたりすると、誰かを雇ったり、事業を大きくした方が良いのかなと考えて。

 

「やらにゃいけんが入ると迷走するんです。」(しなければならない)

 

迷って、売り上げ売り上げ、お金、お金ってなった時は、しんどかったです。迷走です。売ろうとすればするほど売り上げは下がるし。

この人を幸せにしようと思った時は、必要な人の手に届いて対価になってる循環ですけど、売ろうと思ったらただの物になるので売れないですね。その人幸せにしたい。買いたいと思って買ってもらう。それだけを思えたら大丈夫かなって。

 

はじめは自分が楽しくて、相手が喜んでくれることが楽しくてやっていたことが、事務的になり、人の評価が気になして楽しくなくなって、原点を見失った時期でした。

 

思うように楽しくやればいいかって思って、ちょっと楽になりました。

 

「できないならできないでいっか」って最近はやっと思えるようになって、一人でやっていこうと決めました。

 

私が楽しんで、私にしか出来ないことやっていこうと思います。

 

それに、人を大切にしていたら、何かしらご縁がありますね。そこから、お仕事をもらったりするのかなってつくづく思いますね。

 

人は一つ道でしかないけれど、誰かと出会うことで、いっぱい枝が分かれてくる。それしかないなとは思っています。自分はこれしかないって思っているけれど、こんなこともできるのかって、色んな道をつけてくれるのは、やっぱり人だなって思います。

 

この人に会いたいなって思ったら会いに行ってみる。こういうことをしてみたいって思ったことは、情報発信してみる。良いなと思ったことは、実現できるように行動に移してみるっていうのが大事。そうやっていたら、自然に道がつくのかなって。

 

人との繋がり

岐阜にあった癌の方向けカフェをされていた方に、帽子を見つけていただいて、取り扱ってもらっていたんです。そのお店に通われていた癌サバイバーでシンガーソングライターの方がいて、その方は、よく全国を講演されていて、会ってみたいと思っていた方だったんです。

たまたま、その方のライブがあると聞いて、ちょうどカフェにもご挨拶に行かなきゃと思っていたので岐阜まで行ったんですよ。

そしたら、凄い良いライブで。感動して。

それで「広島にも来てもらいたいです!」って言ったら、実現したんです。まずは福山市でセッティングしてライブの一回目を開催して、そこから府中市でもしてもらって。その方と繋がって、さらにそこから、他の癌の方々とも繋がれるきっかけになりました。

 

岐阜に行かなかったら色んな人とも繋がれなかったので、やっぱり行動しないとダメだなって。

他にも、ドラマにも帽子を使ってもらったことがあるんです。夫婦で癌になるという設定のドラマで。ドラマの小物を担当している方がHPを見てくれて使っていただきました。

そのことについてブログに書いてたんですが、後になって、癌になっていない時にそのブログを見ていた方が、癌になってしまって、府中の人が作った帽子がドラマで使われてたなって思い出して来てくれたり。

 

人に知ってもらってるって大切なんだなって思って。人と繋がったお陰でどうにか届けてこれたかな。

 

『niko』への想い

「単純に、笑顔になってもらいたいなと思って名付けました。」

 

ブログで知り合った方で「癌の経験者の方に話を聞いてもらって、楽になったわ」という話をいただいたことがあったんですよ。誰かに話を聞いてもらえる場所。少しでも楽になってもらえたらなっていうことで、こういうお店になっています。ハンドマッサージもやっていますよ。

 

帽子は普通の帽子なんですけど、帽子プラス何か。話したり、ブログを読んで元気になってもらいたいみたいな感じが良いなって。そういうところが、他の帽子屋とは違うところかな。

竹本裕子で一つの商品というか、あの人に会って元気になろう、この帽子でお母さんに元気になってもらおう、これを被って元気になろう見たいな。

希望をもって買って下さる方が多いので「希望」になるような人になりたいみたいな。

 

アドバイスをしたら依存みたいになるじゃないですか。居てくれるだけでいいっていう存在になりたい。何をする訳でもないけど、お店に来るだけで「よし頑張ろう!」みたいに思ってもらいたいし、来ていただく時間を作ってもらいたいなと思います。

 

迷っていた時は、その感覚を離れた時がありました。でも、やっぱり私がしたいのは「そこじゃな」。原点はその感覚だなと。やり始めた意味がないと思ったし、楽しくもないし、気づいたので大事にしていきたいと思っています。

 

これからやりたいこと

「私はこんな変な性格というか、勝手に窮屈に育ったというか。笑」

 

だから、子供時代とか振り返ると、今の子供達に

 

「大丈夫よー。自分を出してもいいし、失敗してもいいんよー!」

 

って伝えられたら良いなって思います。私は、癌をきっかけにこうなれたけど、窮屈に感じている子がいっぱいおるんかなって。それを、話す場とか絵本とかで伝えられたらと考えています。読み聞かせをしてる友人と劇みたいな感じで楽しく、面白く伝えたいねって話しているところ。それで学校とか回ってみたいですね。

竹本裕子

  • メールまたは電話でお問い合わせください。

    『niko』
    住所:広島県府中市目崎町486-3
    電話番号:
    HP:https://ameblo.jp/y5takezou/